本当に祈るべきは、
――いや。
信じるべきは。
片霧行雲。
神父服の男はそう名乗っている。
男は死霊術で蘇った動死体である。
死の原因である"宗教" "神" "聖職者"に対し、
沸々とした憎悪を静かに向けていた。
その憎悪も。解けて消えた。
ある一柱の小さな神の救いを以って。
「生きたい奴は生きればいい。死にたい奴は死ねばいい」
「ただ、」
「俺のようになるなよ」
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▼生い立ち
神の子と呼ばれていた。
生まれつき瞳の赤い者は、
神の魂の欠片が宿った子。
"ユクモ=ヴェルメイユ"もまた、
神の子であった。
両親は信心深く、ユクモ自身も
神のことを一心に信じていた。
神は俺達を見守って下さっている。
神は救いを齎してくれる。
皆は自分を神の子だと言った。ならば祈るなら、届くはず。
祈るなら。祈るなら。
"神の子"の本当の役目は果たされた。
"贄"。 その血を捧げ給え。
神の欠片を神の身許へ還し給え。
20歳になったある日。教会へ来たユクモは殺された。儀式と称し。鎌での断頭。
最期に聞いたのは神父の狂笑。最期に見たのは信者の心からの笑み。
届かなかった。祈りなど。祈りなど。祈りなど。
神など。
けれど、蘇ってしまった。
神への恨みを抱き。信教に裏切りを受け。
心を忘れ。人を殺し、血を啜り、ああ、ああ、
もう、いやだな。
そう、かつては思っていた。
スターチスの咲く場所で。また会おう。
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