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No.79 朝灯 水幸
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age:15
sex:漢だぜ!!
height:174cm
weight:68kg
Trend:攻撃してくるなら
Favorite:格好いいモノ
Hate:白紙の回答
Comment
俺はできることからやる。後から増やせばいいんだ。
【Battle_Log】
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朝灯 水幸(あさひ みずゆき)

中学3年生。
自由な校風の学校で、ピアスを空けようが髪を染めようが大丈夫。
彼もご多分に漏れず、髪を染めてピアスを空けている。

「願いごとだったら、お金がいっぱい欲しいなあ。」

彼は普通の人間だ。願い事も、人間性も、周りに流される事も、自分が無いことも。
ごくごく普通のどこにでもいる人間だ。

関わった人たち。


13  関西弁四天王の一人。独特~……な人。怖い。ポイント増やさないようにしなきゃ……。
16  しーさん。せ、責任ってどうやって取るんだ……?
19  ダイバーの人……らしい。なんかすげーらしい。
49  スゲェ。
59  テンの兄さん。落ち着いた大人って格好いいな……。→ヤソジマの兄さん。記憶が戻ったらしい。
61  ロッさん。頼れる大人って感じ。探偵らしい。
76  サバイバルのすげー人。大丈夫かな。大丈夫じゃない。抱え込みすぎ。
109 白い子。しーさんと真逆らしいけど、なんだか元気だ!……もうシチューぶっかけないでね!?
171 俺とは少し離れた所を拠点にしてるらしい。頼らせて貰うことあるかも。
181 居酒屋の人。アキハさんとお幸せに……で、良いのか……?
198 メガネシスターの子。色々あったみたいだけど、結構図太い。
203 真祖。居酒屋の人。<<ソウルフレンド>>……! ……だけどちょっと怖いぞ……。
218 幽霊の人。……ほんとに死んでないよな!?





普通だ


 君は私じゃなくて、障害者っていう私の記号を見てるんでしょ。

 違う。
 そんな目で俺を見ないでくれ。


 本当?

 ……羨ましいとは、思っていた。


 ほら、そうじゃないか。

 だって、ずるいじゃないか!
 俺は必死で個性を作ろうとしてる!髪だって染めて、ジャケットだって自分で買った!
 だのに、あれだけで注目されるなんて!!


 あんたは、すぐ皆の真似をするねえ。
 ……仕方ないだろ。
 俺は、面白くないんだから。


――――ずるい


 あの子は変わった。
 不登校気味で、元から学校にはあまり来なかったけれど、ある日から学校に来るようになった。
 何故かって?聞く勇気も無かったさ。
 だけど現に学校に来て、ぎこちないながらも普通に会話をして、普通になっているところをみた。
 その個性だけは、普通じゃないままに。人をひきつけながら、普通でいる。
 それは。
 それはだって、プラスに働いているじゃないか。
 マイナスがあったって、打ち消せているじゃないか。

 ずるい。
 そう思う自分が、さもしい。

 ……ある日、フタハナの噂を聞いた。
 本当なのだろうか。だったら、あの子もフタハナで願いを叶えたのだろうか。

 分からない。でも、千載一遇のチャンスだと思ったから。
 俺は、その招待状に名前を書きなぐった。






俺は普通でいい



 気がつくと、自分の部屋だった。
 夢だったのか、そうでないのか。島で繋がらなかったスマホを確認すると……見覚えのない、否、ここ数日で大切な物になった筈の、多数の名前と連絡先が残っていた。
 軽く連絡を入れる。すると、ポン、ポン、ポンと返事が戻ってくる。
 現実だ。夢じゃない。うれしくもあり、島での出来事が事実であったという事に身震いもする。

 それでも、自分は戻ってきたのだと生還を噛み締めて、部屋を出た。
 親が居る筈の居間へ向かう。伝えなければいけないことがある。
 中々決まらなかった志望校、どこでも良い、制服が格好いいからと思って決めていた学校から、行き先を変えるために。
 そして……


「今からする質問に、全て正直に答えてください。」

「お、おう。」


 何故か、応接室で茶を飲み、質問を受けていた。
 居間へ行くと、まず両親が目ン玉をこれでもかとひん剥いてこちらを見つめ、その後、二人がかりで俺を抱きしめてきた。絞め殺されるかと思った。
 なんと、10日間。あの島にいたそのままの時間がこちらでも経っていたのだ。
 家出か、誘拐か。いずれにしろ行方不明であったのには代わりが無い。ここまで心配するのも無理はない。
 俺も暫くポカンとしていたけど、二人が泣いている様子を見ると、つられて泣きそうになった。

 そして、居間にいた他幾人かのスーツ姿の人物に、ここへ連れて来られて今に至る。

「……なるほど。また異能か。味をしめましたね……。」

「また、って事はやっぱり何回もやってるんスか、あの……フタハナは。」

「君が体験した異能を配るやり方は、これで2回目だよ。我々は、別の形式でも最低6回は行われたことを記録している。」


 息を飲む。
 その後に聞いた話は燦々たる物だった。
 生還者から聞いただけ、というには余りある出来事ばかりで、今回のゲームが如何に"遊び"だったのかを痛感する。


「さて、最後の質問だ。……君は、人を殺したかい?」

「……いいえ、俺は一人も殺してない。」

「あの島で起きた殺人は立証ができない。罪には問わない、だから正直に。」

「俺は殺してない。」

「……分かった。信じるよ、貴方を。」


 それで、終わりだった。


 両親と施設の話が終わるまで、玄関の待合室でソファに腰掛けて、渡された書類の内容をチェックする。
 今後の保証とか、世間体のカバーストーリーとか、そういう事にするので話を合わせてください、とか。そういう段取りの話が記載されている。

 成績とか内申はどうにでもなる。けれど、やっぱり時間だけはどうにもならない。
 焦る。
 早く大阪へ行きたいのに。大阪の学校を受けたいのに。人生でやっと、目標らしい目標ができたのに。
 ……元々、大した勉強はしてこなかった。中の下、それが自分の位置。
 だけど、親を説得して大阪へ行くなら、一人暮らしをするのなら、説得力が必要だ。
 記念受験になるかもしれない。更に三年、いやソレ以上待たせてしまうかもしれない。
 でも、もう弱音は吐きたくない。堂々と迎えに行きたい。そして、それを親にも伝えたい。


 ……だけど、伝えたい事と人がまだいることを、俺はその時まで忘れていた。

 施設の玄関が開き、誰かが入ってくるのが分かった。受付で話をして、待合室のソファに座り、スマホをいじりだした。
 ……だけど、違和感を覚えた。視界の端に映る所作が、動作が全て見慣れない。

 思わず視線を上げて、その人物を確認する。

 片手が無い、見覚えがある少女だった。

 冷や汗が出るのを感じた。声が詰まって、出なくなっていることが分かる。

 でも、伝えなければいけない。約束したから。


「あのっ、君は……。」

「え?何!? ……どっかで見たような気がするけど、会ったことある?」


 覚えていないのか。いや、当然だ。不快な出来事など覚えていない方が良い。
 ふと、少女が俺の持っている書類を見やる。

「……その書類。ここにいるって事は、君もフタハナにいったの?」

「え、ああ……行って、帰ってきたよ。」

「そう。……無事に戻ってこれたんだね。」

「無事……そう、だな。俺は無事だ。」


 沈黙。ふたりとも分かっている。
 自分は無事でも、周囲の誰かが、通信で声だけ聞こえる誰かが、犠牲になって、死んでいって、殺して、殺される。
 一回だけでなく、何度も、何度も。それを簡単に言い表す事はできない。


「……謝らなきゃいけないことがある。俺から、その、君に。」

「私に?」

「覚えてない、かもしれないけど。今年の始めごろだったと思う。
俺、君に凄くデリカシーの無い事を言った。それで、君は怒ってどこかにいった。
その片腕が無いのが、格好いいって言ったんだ。」


 再びの沈黙。


「ごめんなさい。俺は、君がどう思ってるか考えずに勝手に決めつけて、君を傷つけた。」


 少女はしばし逡巡して、ようやく口を開く。


「……あぁ、あの時の人。なんか良くわからないけど、邪魔だなあって思ってた。」

「ぐ。」

「……良いよ。あの時、なんて言ったっけ。覚えてないけど、多分、いつもどおりイライラしてたんじゃないかな。」

「イライラ?」

「そう。格好いい、なんて言うかもしれないけど。……特別な目で見られるっていうのは、気分の良いものじゃ無いよ。」


 特別な物。自分がずっと欲しかったもの。でもそれは、島の中でさんざ体験したように、そんなに良いものじゃない。


「それは……ホント、ごめ」

「もう良いよ、謝らなくて。気にしてない……って言ったら嘘になるけど。でも、気にしない事にしたから。」


 許してもらえたのだと、そう思う事にする。でも、いまだ彼女が片腕を気にしているという事は、心の中に刻み付けた。
 だから、聞きたいことがあった。


「気にしない事にしたのは、どうしてか聞いてもいいか?」


 恐る恐る、聞く。単純な興味と、今後同じ様な失敗をしないために。
 少女は暫く考えた後、島に行ったんなら良いか、と水幸の方へ顔を向ける。


「……世界はこういう物だ、って教えてもらったんだ。」

「それは……島で?」

「うん。ということは、君も良い出会いがあったのかな。」

「ああ。いい出会い、って一言で片付けてちゃ勿体ないくらい。」

「そう。
……私は、腕が無くって、それをずっと恨んでた。でも、腕だけで済んで良かったとも思ってた。
原因は事故で、誰のせいにもできなかったから、仏様が助けてくれたんだ、って。
だから、あの島でも仏様に祈った。でも、あの島で人殺しが起きるのは止まらなかった。

良く考えたらさ、仏様が助けてくれるんだったら、私の腕だけ、取らないよねって。
ううん、それより前に、事故から全部守ってくれる筈だよねって、そう思った。
そうしたら、もう何も分からなくなった。仏様に、勝手に怒った。」


 無力感。それは自分も感じていたこと。
 同じ様に何もできなくて、同じ様に焦燥感を得ていたのだろう。


「……人は辛くて、理不尽な出来事を、何かのせいだと、思い込むんだって。
でも、『そうやって現実を見て、理不尽を感じられたから。君はもう大丈夫だろう』って、言ってくれる人がいた。

どうあっても、人の私を見る目は変わらないからさ。義手とか、考えたけど、結局バレるのは変わんないし。」

「それで、気にしない事にしたって?」

「うん。それに……」


 ふ、と少女が手をかざす。何事かと思った瞬間、不思議な違和感と独特な気持ち悪さが襲いかかる。
 浮いている。物理法則も何もかも無視した超常現象……異能だ。


「う、わッ!?ちょっ、降ろして、降ろして!
これ、異能か!も、持ち帰ったのか!?ナンデ!?」

「あはは、ごめんね。
……これがあればさ。どんな事でも乗り越えられる気がしたんだ。
お前なんていつでもこうだぞ、って力。……それに、本当に欲しかった物でもあるし、ね。」


 降ろされて、再び覗く少女の顔には、どこか安心と、確固たる芯によって支えられた笑顔が見て取れた。
 もう、あの頃の不安定さはどこにもないのだと、そう言い切れるような。


「そっか。良かったな。
……俺は、置いてきたよ。あんなん、俺が欲しかった特別なモンじゃねえ。」

「それなら、それがいいよ。碌じゃない物もいっぱいあったでしょ。」


 やがて、少女の名前が呼ばれ、立ち上がる。別れの時間だ。
 おそらく、ここにはまた来る事になるだろうし、学校でも会う事はあるだろう。
 だけど、もう会っても特別話す事はないかもしれない。どうしても外では話せないし、思い出すのが辛い事もあるだろうから。


「……そういえば名前、聞いてなかった。俺は、朝灯 水幸って言うんだ。」

「私はさいか。朝風 蓑灰。これで"私"を知ったってことだね?」

「……そうなるな!」


 一年後か、数年後。俺は大阪に行く。
 こっちでやり残した事は全部終わらせて、清々しい気持ちで行くのだ。
 そのためにやらなきゃいけないことは山積みだけど。

 もう迷わないって約束したし、絶対に行くと約束もしたから。
 だから、俺は前に進むって、決めたのだ。



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とくにNGはありません。ログを保存含めて許可。