『 誰 が 皆 の かわり に 死ぬべき か ? 』
彼が生まれ育った村では、疫病が流行っていた。
「あとはおれが引き受けましょう」
「この村におれほどの役立たずは他にいません」
その小さな村では、薬も食料も足りなかった。
街から薬を売りつけにやってきた商人が殺されたこともあった。
村に昔から住んでいた魔女も、病の現況として吊るされて死んだ。
口減らしのためにまず老人が殺され、三つ子は一人残して鍋で煮られた。
成人した子を持つ老いた経産婦も間引かれ、病弱な者もそこで処分された。
『次に死ぬべきものは誰?』
ポストルカもまた病弱ではあったが、占い師という役職ゆえに生かされた。
それを公平に決定し、責任を負う者が村には必要だったからだ。
「もう十分減らした。次に死ぬべきものはおれでしょう」
「今日の晩、村人全員をこの村で一番広い家に集めてください。
魔除けの香を焚いて、皆で未来のことを相談しましょう」
その晩、毒花の香が焚かれた。
村人は残らず息絶え、病がこの村の外に持ち出されることはない。
「この病が世界に広がれば、大都会では何万人もの人間が死ぬ。
たった数十人のおれたちの命は、何万もの命を散らす価値のあるものか?」
Houttu"ynia" cordata.
滅びた村の一番広い家の中。
ポストルカはたった一人、同胞たちの死体に囲まれて目覚める。
毒も病も、もうどこにもなかった。